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  • 2022年04月08日健康栄養

    統合医療を取り入れる時の注意点【医師執筆コラム】

    統合医療を取り入れる時の注意点

    注意点

    執筆者:天野方一

    先週は「アメリカにおける統合医療の現状」についてご紹介しました。

    今週は、統合医療を取り入れる時の注意点をご説明します。

     

    統合医療を行う際に注意するべき3つのポイント

    統合医療は、さまざまな疾患や症状への有効性がわかってきているものですが、統合医療における相補・代替医療を行うには注意しなければならない3つのことがあります。

     

    1. 統合医療を検討する前には必ず通常の西洋医学による医療を行うこと
    2. 統合医療のすべての効果が十分に証明されているものではないと理解すること
    3. 取り入れた統合医療の内容や効果の理解は十分にし、主治医に積極的に申告すること

     

    1つ1つ簡単にご説明しましょう。

    1.統合医療を検討する前には必ず通常の西洋医学による医療を行うこと

    私たちが普段、病院やクリニックを受診した時の処置や投薬や手術などの治療に使われる方法は、多くの臨床試験が繰り返された後にようやく“有効”だと断言されているものです。一方、統合医療はまだまだエビデンスが多くない医療です。だから、あなたがもし医療にかかる必要が出てきた時には、まずは西洋医学による医療を受けましょう。そのうえで、統合医療が必要な場合に限って、ご自身に適した統合医療を採用することが大切です。

     

    2.統合医療はまだすべての効果が十分に証明されているものではないと理解すること

    統合医療はまだすべてのエビデンスが証明されていない発展途上の医療です。“有効だ”とされている研究も、まだ数が少なく、効果があるだろうとされている治療も、実際はまだ明らかになっていないものもあります。

     

    これは医薬品についても同様です。医療機関で処方される医薬品やドラッグストアで購入できるものも含め、“医薬品”と呼ばれるものは莫大な費用を費やし長い年月をかけて臨床試験を重ねた結果ようやく一般に販売されます。

     

    一方で、統合医療に使われるハーブやビタミン製品などは、その多くが、医薬品ほどの労力をかけたしっかりとした試験が行われていないのが事実です。

     

    つまり、統合医療に使われる“クスリ”の多くが、正しい“薬効”をはじめ、人体に影響を及ぼす副作用などの情報が不十分なのです。これらのことは指圧療法などの施術者にもいえます。西洋医学を行う医師や看護師は国家資格であるため、一定の知識・技術レベルをクリアした人達です。しかし統合医療の施術は、資格がなくてもできることがあるため、施術者の知識・技能レベルの程度はまちまちなのです。

     

    3.取り入れた統合医療の内容や効果の理解は十分にし、主治医に必ず申告すること

    統合医療は、まだ日本国内ではメジャーなものではなく、統合医療を行う医療機関も限られています。だから、もし統合医療を行っている場合は、自分が使用しているサプリメントの種類や医療の内容を自分自身でよく理解しておき、かかりつけ医に必ずその旨を伝えることが大事です。

     

    例えば、うつ病の治療には、統合医療では治療のためにハーブが使われる場合がありますが、一方ハーブは、うつ病治療に一般的に使用する西洋医学の薬剤の作用に影響することがわかっているため、飲み合わせという点で注意が必要です。

     

    もちろん、かかりつけ医はほかに飲んでいる薬はないか確認しなければなりませんが、その際、使っているハーブの種類や薬効について、まずは使用者ご本人から説明する必要があります。

     

    統合医療についてのまとめ

    統合医療は、西洋医学ではまかないきれない疾患や症状の改善に有効であるケースがあり、アメリカや日本などでよく認識されるようになってきています。一方でまだまだエビデンスの蓄積は不十分で、メカニズムそのものも解明されていません。治療効果には個人差もあるため、統合医療を行う際はご自身でその方法をよく調べてご納得したうえで進めることが大事です。

     

    天野方一

    方一先生

    2010年に埼玉医科大学卒業後、都内の大学付属病院で初期研修を終了し、腎臓病学や高血圧学の臨床や研究に従事し、抗加齢医学専門医や腎臓内科専門医等の資格を取得。

     

    予防医学やアンチエイジングの重要性を感じ、2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、食生活や生活習慣等など日常生活を改善することで、身体だけでなく心もハッピーに」をモットーに、予防医学やアンチエイジングに関する研究を行っている。

     

    2018年秋からハーバード大学公衆衛生大学院に留学し、最先端のアンチエイジング及び、?The relationship between health and happiness(健康と幸福の関係性)」?について研究予定。

     

    資格:抗加齢医学専門医、腎臓内科専門医、内科学会認定医、日本医師会認定産業医

    公衆衛生修士号(Master of Public Health、MPH

     

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    http://activehealthlab.tokyo/

     

    参考文献

    1, Kiecolt-Glaser JK, eta l. Yoga’s impact on inflammation, mood, and fatigue in breast cancer survivors: a randomized controlled trial. J Clin Oncol. 2014; 32: 1040-9.

    2, Cahn BR, et al. Yoga, Meditation and Mind-Body Health: Increased BDNF, Cortisol Awakening Response, and Altered Inflammatory Marker Expression after a 3-Month Yoga and Meditation Retreat. Front Hum Neurosci. 2017; 11:315.

     

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