トピックス

  • 2022年04月08日健康栄養

    アメリカにおける「統合医療」の現状【医師執筆コラム】

    アメリカにおける「統合医療」の現状

    統合医療

    執筆者:天野方一先生

    統合医療は、近代の西洋医学の考え方をベースに、伝統医学や相補(補完)・代替医療などを患者によって組み合わせて行う医療のことで、アメリカが先進となり世界でも注目されている医療です。

    統合医療

    具体的には、一般的な医療とは少し異なる、漢方薬やサプリメント・ヨガ・自然療法などを組み合わせる医療のことで、よくある民間療法のイメージと近いものですが、その有効性については、慢性疾患をはじめとする、現代の西洋医学では治療が難しい症状に対して質の高い治療効果が証明されています。

     

    そしてこの統合医療は、治療と予防の2つの方向からアプローチすることから、QOL(生活の質)の維持・向上という点でも期待されています。

     

    統合医療が進んでいるアメリカでは、子供の10人に1人、また慢性疾患を持っている子供の約半数もがこの医療を受けているといわれています。

     

    アメリカにおける主な相補・代替医療

    こちらが、アメリカにおける主な相補(補完)・代替医療です。

     

    漢方薬

    サプリメント

    栄養療法

    鍼療法

    指圧療法

    ホメオパシー治療

    ヨガ

    瞑想など

     

    「統合医療」の有効性

    統合医療は、西洋医学の治療では難しい症状にも有効であることはわかっていますが、そのメカニズムはまだ解明しきれていません。

     

    統合医療が有効な具体例は、

    • 針療法による痛みの緩和
    • プロバイオティクスによる下痢の改善
    • DHAによる幼児の脳の発達
    • ADHA(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:注意欠如・多動症)の改善
    • ヨガによる注意力の改善

    などが有名です。

     

    また、喘息や過敏性腸症候群にも効果があるとされています。

     

    このような、治療の“有効性”は、過去の研究によって少しずつわかってきてくるもので、現在でも世界中で検証が行われています。

     

    そんな過去の研究の中から、ヨガに関するものをご紹介していきます。

     

    医学的にも有効性が確認されているヨガ

    ヨガ

    ヨガは、インド発祥の元々は修行僧の身体法ですが、それがアメリカでフィットネス的な要素も加えてアレンジされ、健康運動として・ダイエットとして・リラックス法として・メンタルコントロールなどなどさまざまな目的のために、誰でも始めやすいことから日本でも大ブームになっています。

     

    先ほど統合医療の例としてご紹介しましたが、このヨガ、医学的にも有効性が確かめられており、特に慢性炎症の改善やアルツハイマー型認知症の予防が注目されています。

     

    ヨガの慢性炎症やアルツハイマー型認知症への効果を証明した研究

    ●乳癌罹患後の患者200名を、ヨガを行うグループ(1回90分間のヨガレッスンを週2回・12週間行う)と行わないグループにわけて、最初と最後に血液検査による炎症レベルを調べた。その結果、ヨガを行ったグループは炎症レベルが10?15%も低下した。

     

    ●38名の参加者(平均年齢8歳、男女比1:1)に3カ月のヨガを行ってもらい、その前後でBDNFや血中炎症サイトカイン値を比較した。その結果、ヨガの後はBDNF値が上昇した。また、サイトカインの項目中、慢性炎症を悪化させる値の減少、慢性炎症を改善させる値の上昇がみられた。

     

    ※BDNF(brain derived neurotrophic factor; 脳由来神経栄養因子):

    記憶や学習においても重要な働きを持つとされ、BDNFの増加は認知症予防に効果があることがわかっています。

    神経系の液性蛋白質で神経細胞の成長を促したり維持したりする作用があります。

     

    ※サイトカイン:

    免疫細胞同士の情報伝達を行う、タンパク質でできた物質。炎症反応・免疫応答・造血・創傷治癒などに関与する細胞を増殖・分化させる等で、免疫反応を調節したり、免疫細胞を増やしたり、活性化させる働きがあります。

     

    次週(10月9日)は、統合医療を取り入れる時の注意点について、ご紹介いたします。

     

    天野方一

    方一先生

    2010年に埼玉医科大学卒業後、都内の大学付属病院で初期研修を終了し、腎臓病学や高血圧学の臨床や研究に従事し、抗加齢医学専門医や腎臓内科専門医等の資格を取得。

     

    予防医学やアンチエイジングの重要性を感じ、2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、食生活や生活習慣等など日常生活を改善することで、身体だけでなく心もハッピーに」をモットーに、予防医学やアンチエイジングに関する研究を行っている。

     

    2018年秋からハーバード大学公衆衛生大学院に留学し、最先端のアンチエイジング及び、?The relationship between health and happiness(健康と幸福の関係性)」?について研究予定。

     

    資格:抗加齢医学専門医、腎臓内科専門医、内科学会認定医、日本医師会認定産業医

    公衆衛生修士号(Master of Public Health、MPH

     

    アンチエイジングに関する最新情報を発信中!

    http://activehealthlab.tokyo/

     

    参考文献

    1, Kiecolt-Glaser JK, eta l. Yoga’s impact on inflammation, mood, and fatigue in breast cancer survivors: a randomized controlled trial. J Clin Oncol. 2014; 32: 1040-9.

     

    2, Cahn BR, et al. Yoga, Meditation and Mind-Body Health: Increased BDNF, Cortisol Awakening Response, and Altered Inflammatory Marker Expression after a 3-Month Yoga and Meditation Retreat. Front Hum Neurosci. 2017; 11:315.

ページの先頭へ