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    サルコペニアの予防および改善法!積極的な栄養摂取と運動が基本【医師執筆コラム】

    2018年6月25日

    食事

    執筆者:抗加齢医学専門医

    天野方一先生

    先週の「シニア世代は太っている方がいい?サルコペニアについて」に引き続き、今週は「サルコペニアの予防及び改善法!」をご紹介いたします。

    サルコペニアの予防及び改善法!

    1.食事……高齢者こそ肉(タンパク質)を多く摂取すべき!

    高齢者は、筋肉の材料であるタンパク質(アミノ酸)の吸収能力が下がり、さらにさまざまな原因で筋肉の分解速度が合成速度を上回ってしまっています。したがって、筋肉量の維持のためには筋肉の材料であるタンパク質(アミノ酸)を意識的に多くとる必要があります。

     

    過去の研究をまとめると、必須アミノ酸の補充は筋肉量の増加効果があり、サルコペニアを予防する可能性があると考えられています6

     

    ただし、重度な腎機能障害がある人はタンパク質の過剰な摂取によって腎不全症状を悪化させる可能性があり、注意が必要です。

    2.運動……身体活動を増やす!!

    レジスタンス運動(筋肉トレーニング)は、インスリン抵抗性や炎症を改善し、筋肉量を増やすことがわかっています7。また、サルコペニア肥満の場合にはレジスタンス運動だけでなく有酸素運動を併用した方が良いことも分かっています。

     

    しかし、高齢者において筋肉トレーニングやハードな有酸素運動は実行が困難である場合があります。

     

    そこで身体活動の面に注目してみましょう。身体活動とは、スポーツなどの運動だけではなく、日常生活での駅まで歩行などの生活活動も含めた考え方です。2010年、WHO(世界保健機構)は身体不活動が高血圧、喫煙、高血糖に次いで全世界の死亡者数に対する4 番目の危険因子であると発表しました8

     

    身体不活動は多くの国々で増加していて、さまざまな疾患(循環器疾患、糖尿病や悪性腫瘍など)の発症及び悪化に密接に関係しているといわれています。

     

    高齢者においてハードな運動が実行困難な場合でも、比較的容易な日常生活内でできる生活活動を増やすことによって身体活動を増やすよう意識した方がよいと考えられています。

    身体活動……運動+生活活動

    日常動作

     

    3.抗炎症作用のある食べ物の摂取

    体内の慢性炎症は筋肉量を減らすので、サルコペニア状態になる原因の一つと考えられています。抗炎症作用のあるEPA/DHAの摂取は高齢者において筋肉合成を促進し、身体能力が上昇し、サルコペニアの予防と治療方法になる可能性があります。

     

    EPA/DHAなどの抗炎症作用のある良質な油といわれるオメガ3脂肪酸は、以下の食べ物に多く含まれています。

     

    ・えごま油、シソ油、亜麻仁油等の良質な油

    ・サバ、イワシ、アジ、マグロ、サーモン等の青魚

    ・カボチャや人参等の緑黄色野菜

    ・大豆、小豆、インゲン豆等の豆類

     

    まとめ(Take home message)

    体重が減って筋肉が減るサルコペニアは、転倒、脳卒中や心疾患などの危険因子であることがわかっています。積極的に栄養を摂取し、更に運動をし、病的な「痩せ」を予防し元気な体を維持しましょう。

     

    参考文献

    1. Characteristics of Glucose Metabolism in Underweight Japanese Women. J Endocr Soc. 2018; 2: 279-289.
    2. Preoperative Frailty Assessment and Outcomes at 6 Months or Later in Older Adults Undergoing Cardiac Surgical Procedures: A Systematic Review. Ann Intern Med. 2016; 165: 650-660
    3. https://www.rizap.jp/images/pdf/0/681/G1/170517_tokyodaigakusyakairenkeikouza.pdf(2018年6月9日時点で確認可)
    4. Relationship between sarcopenic obesity and cardiovascular disease risk as estimated by the Framingham risk score. J Korean Med Sci. 2015; 30: 264-271
    5. Association of sarcopenic obesity with the risk of all-cause mortality: A meta-analysis of prospective cohort studies. Geriatr Gerontol Int. 2016; 16: 155-166
    6. Effect of beta-hydroxy-beta-methylbutyrate supplementation on muscle loss in older adults: a systematic review and meta-analysis. Arch Gerontol Geriatr. 2015 ; 61: 168-175.
    7. A randomized controlled trial of resistance exercise training to improve glycemic control in older adults with type 2 diabetes. Diabetes Care. 2002 Dec;25(12):2335-2341.
    8. Global Recommendations on Physical Activity for Health

     

    執筆者:天野方一先生

     

    2010年に埼玉医科大学卒業後、都内の大学付属病院で初期研修を終了し、腎臓病学や高血圧学の臨床や研究に従事し、抗加齢医学専門医や腎臓内科専門医等の資格を取得。

     

    予防医学やアンチエイジングの重要性を感じ、2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、食生活や生活習慣等など日常生活を改善することで、身体だけでなく心もハッピーに」をモットーに、予防医学やアンチエイジングに関する研究を行っている。

     

    2018年秋からハーバード大学公衆衛生大学院に留学し、最先端のアンチエイジング及び、?The relationship between health and happiness(健康と幸福の関係性)」?について研究予定。

     

    資格:抗加齢医学専門医、腎臓内科専門医、内科学会認定医、日本医師会認定産業医

    公衆衛生修士号(Master of Public Health、MPH

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