ハーバードも科学する「幸せ」と「健康」

2018年7月23日

幸福

執筆者:天野方一先生

近年、健康と「Happy」や「Positive」などの前向きな感情・思考の関係が注目されています。

どのぐらい注目されているかというと、世界でも有名なハーバード大学の公衆衛生大学院に「健康と幸せセンター( Lee Kum Sheung Center for Health and Happiness )」が設立されたほどです。このセンターは、前向きな思考や仕事のやりがいなどが健康にどう影響するか解明することを目的に研究しています。

今回のコラムでは、「幸福感やプラスの感情(ポジティブ感情)」が「健康」にどのように関連しているかをご紹介いたします。

感情が健康に与する影響

1.ポジティブ感情は心疾患や脳卒中のリスクを下げる?!

2009年に日本で行われた研究では、心疾患や脳卒中による死亡リスクは「人生を楽しんでいる意識」の高い男性が低い男性と比較し約半分でありました。1

また、ロンドンで1万308人を12年以上追跡調査した結果では、ネガティブ感情を持つ参加者には冠動脈性心疾患発生のリスクが約1.3倍もありました。

この結果は、喫煙、飲酒、1日の果物と野菜摂取量、運動、高血圧、血中コレステロール、糖尿病や仕事による精神的ストレスの因子で補正をしても同様でした2

*ポジティブ感情=プラス志向 楽観的 前向きにものごとを考える

ネガティブ感情=マイナス志向 悲観的 ものごとを悪い方にとらえる

2.糖尿病になりにくい?!

糖尿病患者123人、非糖尿病患者220人それぞれがポジティブ感情かどうか調べた研究を紹介します。結果は、非糖尿病患者は糖尿病患者と比較してポジティブ感情スコアが有意に高い状態でした3

また、中高年の糖尿病患者19人を対象に、食事を摂った後で1日目は糖尿病についての単調な講義を受け、2日目には吉本興業の芸人による漫才を鑑賞して大笑いをし、その前後での血糖値の変化を調べた研究があります。

食後であるために2日とも血糖値は上昇しましたが、その上昇の程度に差が認められました。講義を聞いた日の食後血糖値は平均で123mg/dL上がったのに対し、漫才を鑑賞した日は77mg/dLの上昇だったのです。

つまり、漫才で爆笑した日は講義を聞いた日に比べて食後血糖値の上昇が46mg/dLも抑えられていたことがわかりました4

3.ポジティブな人ほど長生きする?!

ポジティブ感情を持つ人は、身体面の健康度が向上する結果、ネガティブ感情を多く持っている人よりも糖尿病から心疾患にいたるまでのさまざまな疾患にかかりにくく、その結果長生きすることがわかっています。

65歳以上のメキシコ人約2200人を対象とした研究では、ポジティブ感情の人はネガティブ感情を多く表現する人と比較して約半分の死亡率でした5

まとめ

今週は、「幸福感やプラスの感情(ポジティブ感情)」が「健康」にどのように関連しているかをご紹介いたしました。来週は「ポジティブ感情」を持つための方法についてご紹介いたします。

天野方一

方一先生

2010年に埼玉医科大学卒業後、都内の大学付属病院で初期研修を終了し、腎臓病学や高血圧学の臨床や研究に従事し、抗加齢医学専門医や腎臓内科専門医等の資格を取得。

予防医学やアンチエイジングの重要性を感じ、2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、食生活や生活習慣等など日常生活を改善することで、身体だけでなく心もハッピーに」をモットーに、予防医学やアンチエイジングに関する研究を行っている。

2018年秋からハーバード大学公衆衛生大学院に留学し、最先端のアンチエイジング及び、 The relationship between health and happiness(健康と幸福の関係性)」 について研究予定。

資格:抗加齢医学専門医、腎臓内科専門医、内科学会認定医、日本医師会認定産業医

公衆衛生修士号(Master of Public Health、MPH

参考文献

  1. Perceived level of life enjoyment and risks of cardiovascular disease incidence and mortality: the Japan public health center-based study. Circulation. 2009 Sep 15;120(11):956-63.
  2. Positive and negative affect and risk of coronary heart disease: Whitehall II prospective cohort study. BMJ. 2008 Jun 30;337:a118.
  3. Association between poor psychosocial conditions and diabetic nephropathy in Japanese type 2 diabetes patients: A cross-sectional study. J Diabetes Investig. 2018 Jan;9(1):162-172.
  4. Laughter lowered the increase in postprandial blood glucose.Diabetes Care.2003;26:1651-1652. 6
  5. Emotional well-being predicts subsequent functional independence and survival. J Am Geriatr Soc. 2000 May;48(5):473-8.