名医は国を癒し未病を治す~漢方医学の考え方~
2018年7月2日
先日参加した日本抗加齢医学会総会で【抗加齢医学と漢方医学】(講師:渡辺賢治先生 慶應義塾大学環境情報部/医学部)といったセミナーを聴講しました。
講義の中では「未病を治す」という事を、【上医(名医)は国を癒し、未病を治す】といった中国の古い言葉で紹介されてました。
今回のコラムでは、漢方医学における予防医学の考え方をご紹介いたします。
名医は未病を治す~漢方医学の考え方~
一般的な西洋医学の考え方は病気か健康に分かれますが、漢方医学の未病とは【病気になる前の状態】のことです。
イメージとしてみると
西洋医学は下のように健康か病気かに分かれていますが
漢方医学の未病とは以下のようなイメージになります。
この【未病を治す】といった考え方は、病気になる前に治してしまい、病気にならないようにするということで、漢方医学の中で最高の治療は「未病」の治療とされてきました。
実際に2000年前の中国の漢の時代の書物には、【上工(名医)は未病を治し、已病(すでにかかっている病気)を治さず】として紹介され、唐の時代には以下のような言葉で紹介されています。
上医 癒国 医未病之病
中医 癒人 医欲病之病
下医 癒病 医既病之病
上医(名医)は国を癒し、未病を治す
中医は人を癒し、欲病(病気になりそうな人)を治す
下医は病を治し、既にある病気を治す
それでは、この未病とは具体的にどのような状態を指すのか?
「なんとなく不調」といった以下のような状態が未病の可能性があります。
- 疲れやすい、朝起きづらい(気虚)
- いらいらしやすい(気逆)
- 月曜日がつらい、のどが詰まる感じ(気うつ)
- 月経痛、月経時の腰痛(瘀(お)血)
- 爪が割れやすい(血虚)
- 雨が降ると頭が重い(水毒)
- 腰が重い、目が疲れやすい(腎虚)
( )内は典型的な証=患者さんの状態
その他にも、漢方医学には「気・血・水(津液)」といったエネルギー・物質が体を巡っていると考えがあり、巡りが悪くなると以下のような症状を引き起こすと考えられています。
●気血の乱れ
ストレスなどによって気血の巡りが悪くなることで免疫力が低下。
未病を治すために漢方医学を取り入れることもできますが、
日々のちょっとした軌道修正が大病を防ぎ、なるべく早期に行うことも重要です。
講義を聞いて
私自身、東京薬科大学の中医学講座を初級~上級まで受講し、今年の12月には【国際中医師】の資格試験を受験予定です。
以前も、渡辺賢治先生のご講演はうかがったことがありますが、その時にも非常に分かりやすく西洋医学と漢方医学の違い、未病治療に適した漢方医学の特徴といったお話をうかがいました。
漢方医学の最高の治療である【未病の状態で治す】ことは、【そもそも病気ならないようにする】といった予防医学に通じるものだと思います。
最後のメッセージであった
【日々のちょっとした軌道修正が大病を防ぎ、なるべく早期に行う】
健康のためにも日々の積み重ねは大切だと改めて思いました。
投稿者プロフィール
元井章智
東栄新薬株式会社代表取締役社長
株式会社ケーエーナチュラルフーズ代表取締役社長
慶應義塾大学SFC研究所所員、東京薬科大学薬学部免疫学教室専攻
日本抗加齢医学会会員、NR(栄養情報担当者)・サプリメントアドバイザー